2009年2月13日金曜日

運命のおひなさん〜京都散策その③〜

少し前、京都散策の記事で「子供がいるからこそ広がった世界」をご紹介しましたが、こちら京都御所のすぐ傍にある安藤人形店もそのうちの一つ。

今回の日本帰省で娘の雛人形を求めることになり、実はここを訪れる数日前に「人形の町」大阪松屋町を訪れていました。
某大型人形店には様々な作家さんの膨大な数の雛人形が並べられていたのですが、その中でビビビッと来たのが安藤桂甫さんの京雛人形。
「一目惚れ」とはまさにこのこと。
普通ならそこでそのまま購入…となるのですが、
「どうしても桂甫さんにお会いしたい!桂甫さんのお雛様をもっとじっくり見たい!」
との一心で、京都の工房まで足を伸ばすこととなりました。

まず通して頂いたのは、安藤人形店2階の展示室。
部屋の奥までズラーっと段飾りが並べられた様子は、思わず息を呑んでしまう程の美しさ。
間口が狭く、奥行きが深いこの建物は、「うなぎの寝床」と呼ばれる京都ならではの造りなのだとか。


艶やかな西陣、ふっくらとした上品な顔立ちの京雛。
桂甫さんのお雛様は、その色合わせと着付けの美しさに定評があります。

実際に購入したお雛様は写真とは別のものですが、そちらはひな祭りの際にお披露目しますね。

明治36年創業の老舗を担う、二代目安藤桂甫さん。
黄綬褒章を受賞され、「現代の名工」にも選ばれた人形作家の第一人者です。

一階の工房奥で作業される桂甫さんの姿が見えた瞬間思わず心が踊り、「ファンなんです〜!」と駆け寄りたい気持ちをずっと押さえていたのですが、お忙しい中わざわざ二階まで上がって来て下さった上、帰り際には工房の中まで案内して下さいました。

「職人さんだから、もしかすると無口で気難しい方かも」と内心ドキドキしていたのですが、気さくで物腰の柔らかな本当に素敵な方でした。


向かって左から、二代目桂甫さん、三代目忠彦さん、奥様で雛人形コーディネーターの啓子さん。
この写真をご覧になれば、安藤人形店のアットホームな雰囲気がお解り頂けるかと思います。

奥様には本当に細やかな心配りを頂き、一生忘れられないお買い物をさせて頂きました。
実は、私の厄年を最初に心配して下さったのはこちらの奥様。
「厄除けに小豆のものを沢山召し上がって下さいね」
とのお言葉通り、その足で神社で厄払いをして頂き、錦市場で小豆を買って帰りました。

お雛様は本来、持ち主である女の子の身代わりとなって厄や災いから守ってくれる神聖なもの。
今思うと、桂甫さんのお雛様に導かれるようにこの店を訪れ、奥様にこうしたお言葉を掛けて頂いたことで私自身も災いから守られたような気持ちがします。

太平洋戦争では戦闘機に乗り、一歩間違えれば命を落としかねない時代を生き抜いて来られた二代目桂甫さん。
桂甫さんによると、安藤人形店は代々一人息子で受け継がれて来たそうで、既に四代目も控えておられるとのこと。
ここを訪れ、「古くからの伝統や風習を守り続けておられる京都の人々、京都の街は、何か見えないものの力で守られている」と強く感じました。

安藤人形店
〒602-8034 京都府京都市上京区油小路通丸太町上る
電話 075-231-7466

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